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小説のネタになりそうな法律知識 民法1

小説やドラマのネタになりそうな法律知識を書いていきます。単なるアイディアなので自由に使ってもらって構いません。質問や問い合わせは vlaanderenstraat(at)gmail.comまで。

 

出生日をごまかす方法

現代では、ほとんどの出産が病院の産婦人科で行われます。なので、いつ誰の子として生まれたという戸籍の記載は動かしようもないものであるとも感じます。

 

しかし、昔は助産院という選択肢もあったし、今でも自宅で自然分娩という選択肢もあります。仮に自宅で立会人もなく、自力で出産した場合、本当の出生日を知っているのは母親だけです。

 

自然分娩の場合、普通の出生届の様式では受け付けてくれないので、自治体を通じて法務省に届を出すことになります。その場合は、子供やへその緒の写真などを添付することになりますが、実際に生まれた日を証明するものはないので、日付をごまかすことはそう難しくないかも知れません。それ以上に、実際に子供を見に来るわけではないので、写真などをうまくごまかせば、存在しない子供の戸籍を作ることもできる可能性もあります。

 

ただ、全体の件数としてはレアなので、手続きはかなり大変だと思います。単に不正に戸籍を作出するためだけに自然分娩として出生届を出すのは現実的ではないかも知れないですね。

 

こちらのサイトに体験談が載っています。 

出生届 自力出産 studioGEN

 

不正に「存在しない人の戸籍を作る」

仮に戸籍を不正に作る、という意味では、普通の出生届を偽造する方が効率がいいかも知れないです。出生届といっても、自宅でもプリントアウトできるような簡単な書式を使うだけです。医師の署名押印欄もありますが、きょうび印鑑を偽造するなんて、犯罪者からすれば数分でできてしまうわけで、こちらの方が実際に犯罪に使われるケースがありそうです。

 

犯罪者グループだったら、医者を抱き込んで生まれてもいない子供の出生証明書を作らせ、戸籍を作っておいてどこかのタイミングで悪用するという手口も考えられそうですね。気の長い話ですが。宮部みゆきさんの「火車」では、死亡した他人の戸籍を乗っ取って別人に成りすますという話もありましたが。 

火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)

 

 

出生日をずらす

では、実際生まれた自分の子供の出生日をズラす、という筋はどうでしょうか。一つは、子供の受験競争を有利に運ぶためという筋が考えられそうです。

 

子供の場合、1歳の違いが大きな差を生みます。小学校1年生の内容を幼稚園児がこなしていたら割と簡単に天才児扱いされます。自分が間違った育てられ方をしたというコンプレックスがある母親が、一年出生届の日付を遅らせて英才教育を受けさせまくって、子供を天才児に育てる、とか。もちろん犯罪ですが、親の情念的なものを表現する上では悪くないプロットかも。

 

もう一つは、社会問題としてのいわゆる300日問題です。

 

(300日問題の一般的な説明)

離婚成立後、300日以内に生まれた子は、元夫の戸籍に入ってしまいます。離婚届を提出する以前からすでに婚姻関係が破綻していて、元夫とは別のパートナーがいて、生まれた子が明らかに元夫の子ではなくても、出生届を出すと自動的に元夫の戸籍に入ってしまいます。また、これが理由で出生届を出せないために起こる問題として、無戸籍の問題があります。

 

民法第772条

妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

 

ただ、本当の親が分からない場合とか、前夫からのDVで精神的に追い詰められているなどの理由で、出生証明書を偽造してしまう、とかいう悲しい筋立てはありうるのかなと思います。運用でごまかすのではなく、法制度自体を合理的なものに変えていく必要がある分野だと思います。

 

参考

www.toben.or.jp

 

追記

otakalaw.com